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第一話「インフルエンザ予防について」

 インフルエンザのワクチン接種、診断・治療方法についてはテレビ、新聞等のマスコミが、毎日のように報道しているとおりである。
 さて、インフルエンザの予防について、面白い話がある。
私は子供の頃から、父親(医師ではない)から、カゼの予防には、「ウガイが重要だと」、と厳しく教えられ実行していた。
 ところが、「ウガイはカゼの予防に効果無し」、と慶應義塾大学医学部時代、内科学の講義で教わり驚いた。ノドの粘膜に付着したカゼ・インフルエンザのウイルスは、数秒後にはノドの粘膜下に侵入してしまう。ウガイをしてもウイルスを除去することが出来ず無意味だというのが講義の根拠だ。
50年以上前に受けた内科学の講義だが、信じていた父親の教えと違っていたので鮮明に覚えている。
その後、ノドを専門とする耳鼻咽喉科医となり、カゼの予防には、“ウガイ・手洗い”を励行するポスター、マスコミの報道を見るたびに気になって仕方がなかった。
アメリカの医学界でも“ウガイ”の効果は認められていない。最近、やっとマスコミも気づいたのか、今回のインフルエンザ騒動では、イフルエンザの予防には、“ウガイ・手洗い”と言っていたマスコミが、“手洗い・ウガイ”と順番を変えた。昨日放映のプロジェクトⅩ(NHK)では、インフルエンザの予防に、“ウガイ”という言葉はいっさい出なかった。
50年以上前の慶應義塾大学医学部内科学講義を記憶していた私が正しかったのだ。
誤解しないで頂きたいのは、“ウガイ”が有害だというのではない。
“ウガイ”をすることは、ノドにうるおいを与え、ノドの爽快感を感じさせる。
 爽快感は精神的にも、身体的にも良いことだ。

(手洗いは手首のみでなく腕も洗う事が重要。主婦の手洗い。)
“手洗い”を重視して、元気にこの冬をのりこえよう。

          2009年11月21日
矢野耳鼻咽喉科院長  医学博士 矢野 潮