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 第十一話「急性中耳炎の治療方法:
    学者と第一線開業医の考え方の相違


正常鼓膜 中耳炎の鼓膜
 上の写真は当院のファイバースコープで撮影した正常な鼓膜と、急性化膿性中耳炎の鼓膜(あかちゃん)の写真だ。右の鼓膜は赤く腫れあがっていて見るからに痛そうだ。
中耳炎の治療方法には日本耳鼻科学会が、「小児急性中耳炎診療ガイドライン」を発表している。それによると、最初に使うべき抗生物質はペニシリン系の薬剤ということになっている。細菌検査の結果ではペニシリンは確かに有効だ。しかしペニシリンには大きな欠点がある。下痢の副作用が他の抗生物質に比べて圧倒的に多いということだ。
そこに、学問至上主義の医学者の考えと、第一線開業医である私の考えの間に大きな温度差がうまれる。下痢は赤ちゃん幼児にとっては深刻な副作用だ。保護者の方にとっても大きな心配となる。私は副作用の少ない抗生物質を最初に使用し、そして抗生物質の投与はできるだけ短期間で中止するように心がけている。以上が中耳炎に対する私の治療方針だ。

           2010年9月1日
矢野耳鼻咽喉科院長  医学博士 矢野 潮