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  第十七話「学校保険医の表彰」


 昨年11月、私は高木義明文部科学大臣より、「学校保健の普及・発展に尽力した」、とのことで平成22年度学校保健の表彰状を頂いた。
日本医師会会員数165、086人中・47人、神奈川県医師会会員数8、425人中・3人、藤沢市医師会会員491人中・2人(木庭等先生と私)、以上が今回表彰された会員の内訳だ。最初、私が思ったよりもはるかに価値のある表彰だったようだ。
藤沢医師会員491人の中から私が選ばれたことに不思議さを感じ、医師会に問いあわせたところ、長年地域医療に貢献した功績を認められたとのことだ。確かに私は、開業医及び学校医としての責任を果たしてきたつもりだ。当然の義務を遂行した。それ以上でもそれ以下でもない。
医師会関係者は「地域医療に貢献する」という言葉を好んで使う。しかし私はこの文言が好きではない。
「貢献しているか貢献していないか」という表現は他者がその人を評価する場合初めて力を持つが、自分が自分についてこう言っても、全く無力だと思う。
思い返してみれば、私は善行で開業して以来40年以上の長きにわたって、学校医を努めて来た。多い時は、善行小学校、大越小学校、六会小学校、俣野小学校、小糸小学校、湘南台小学校、善行中学、六会中学の8校の耳鼻科検診を一人で受け持ったこともある。当時は、各学校共に今よりはるかに生徒数が多く、入学時検診、プール前検診を一人で行うのは、時間的にも体力的にも大変なことだった。しかし当時は藤沢市内に耳鼻科医が少なく、校医部会の義務を果たすためには仕方ないことだった。
自分の受け持ちの学校の状況を知るために、検診とは無関係の時に、学校の周辺を散策したり、校長先生、養護の先生にお会いし懇談したこともある。月日が流れ、その先生方も定年退職なさった方が多く寂しいかぎりだ。
入学時検診の時、乳幼児期に難治性中耳炎を私が治療していた新入学児の鼓膜が完治しているのを診て、付き添いの保護者の方にその事を報告し、二人で喜びを分かちあえる時、学校医としての最高の喜びを感じた。
今回の学校医の表彰に私が選ばれた事は身に余る光栄だ。しかしその表彰式は、昨年の11月19日(金曜日)群馬県でおこなわれた。残念ながら私は欠席した。金曜日に私は診療を休むことはできない。
 地域医療に貢献するために!

             2011年3月1日
  矢野耳鼻咽喉科院長  医学博士 矢野 潮