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 第十八話
「新入学の皆様おめでとうございます」



 大雪にもめげず共通一次にパスし、晴れて志望校へ入学なさった新入学の方々には、祝福と同時にその頑張りに心からの敬意を払いたい。
しかし、医師の立場から私は、共通一次それに続く入学試験が、1月から2月にかけて行われることに以前から疑問を感じていた。1月〜2月は積雪の怖れ、インフルエンザの流行、そして杉花粉症の季節でもある。
受験生自身にはどうすることもできない外的因子が加わるこのシーズンに、人生の進路にとって重大な共通一次・入学試験を行うのは公平とはいえない。
春入学を秋入学に変更すれば解決することではなかろうか。欧米では常識だ。又、私が述べた理由とは違う様だが、東京大学は秋入学を検討していると仄聞する。移行期におこる混乱は覚悟の上で改革するべきだと思う。
桜の花の舞い散る中での入学式を日本の伝統だと固守する考えもあるが、夏には“ひまわり”が咲く。そのひまわりの種を、将来の日本をになう若者におきかえて考えたら如何だろうか。
共通一次を受ける学生のために、懸命に雪かきをしている人々の姿をテレビでみて、関係者の方々のご苦労にも感銘を受けた。
降雪は医学の問題ではないが、インフルエンザ、杉花粉症は私の専門分野だ。ただでさえ、受験生は睡眠不足になりがちだ。睡眠不足によっておこる体力低下は、当然インフルエンザウイルスの感染を起こしやすくなる。インフルエンザに罹患したら、受験どころではなくなる。
杉花粉症は注意力散漫の原因になり、又、杉花粉症の内服薬は眠気をもようす事がある。受験生にとって、大きなマイナス因子になる事は必然だ。
前にも述べたと思うが、私のクリニックではどんなに混んでいる時でも、他の患者さんには申し訳ないが、受験生は直ぐに診察するようにしている。受験をひかえた若者の貴重な時間を大切にしたいと思
うからだ。
いずれにしても、降雪、インフルエンザ、杉花粉症は受験生の三重苦といえるだろう。

 
 
この原稿を書いている今日(1月31日)も、入学志望校の面接予定を明日にひかえた女子生徒が、高熱で来院した。検査の結果インフルエンザ陽性。明日の面接はあきらめねばならない。まさに悲劇だ。
降雪、インフルエンザ、杉花粉症は受験生にとって、まさに三重苦だ。  

           2011年1月31日
 矢野耳鼻咽喉科院長  医学博士 矢野 潮