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   第十九話 「こどもの危険」

 5月5日はこどもの日の祝日です。
国民の祝日に関する法律によれば、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」ことを趣旨としているという。父親には感謝しなくて良いのだろうか。私は不満だ。
今回は、こどもの日にちなんで、耳鼻咽喉科医の目からみた“こどもの危険な行為”について日頃から感じている事を述べる。
こどもとは、0才から15才迄と定義されているが、私が今回とりあげるのは、おもに乳幼児の事故防止についてだ。
 以下、“こどもさん”という言葉はわずらわしいので“子ども”と表現しますので御了承頂きたい。
私は子どもが危ないことをしていると気になって仕方がない。電車の中でお母様が我が子の危険な行為に無関心でいるのを見て、思わず注意したこともある。特に、自分のクリニックで内では、乳幼児の危険を予防するために強く保護者の方に注意するようにしている。
さて、私が気になる子どもの危険な行為について書き記す。
耳鼻科咽喉科の診察中に泣きながら口の中にアメ玉を入れている子どもがいる。誤って気管に吸い込んだら大変だ。某大学病院耳鼻咽喉科で耳の診察中に幼児が突然死したことがある。死因を究明するために行われた解剖の結果はアメ玉が気道につかえたための窒息死だった。医療訴訟にはならなかったものの、アメ玉が口にはいっていることに気づかなかった医師が注意義務違反をとわれ、訓戒処分を受けた。しかし、私は保護者の方にも責任があると思う。どちらが悪いにしろ、とりかえしのつかない不幸な出来事だ。

幼児がチューインガムをかみながら転んで、気道をふさいで窒息した話もある。チューインガムをかんだままラクビーをしていた選手が、タックルをされた瞬間に窒息した事件は有名な実例だ。
大体、スポーツ選手が試合中にガムをかんでいること自体が見よいものではない。幼児にチュウインガムをかませる事はもっての他だ。
耳鼻咽喉科医には常識でも、一般の方があまりご存じないのが、ピーナツは危険な食べ物と言うことだ。幼児がピーナツを食べそこなって、気管から肺に吸いこむと悪性の肺炎をおこして死亡することがある。私は自分の子どもが幼い頃にはピーナツを絶対に自宅には置かないようにしていた。
尚、幼児が煙草を食べようとした所を父親が気づき、あわてて取りあげたために大事にはいたらなかった事例もある。本当に食べてしまったら受動喫煙の害どころではない。子どもは何をするか分からない。日頃から危険な物を子どもの手がとどく所に置かないように気をつけることが必要だ。

次号に続く。
            2011年5月1日
 矢野耳鼻咽喉科院長  医学博士 矢野 潮