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第二十五話「二代目チョコ」

 犬種はウエストハイランドホワイトテリア・通称ウエスティー。東京の青山ケンネルで求めた。ルックスは最高の雌犬だ。初代チョコにあやかるように同じ名前をつけた。

ゆかり副院長が高校3年生、次女さゆり医師が小学生の時にチョコは我が家の一員となった。
 
その頃から医学部進学を希望していた娘二人は学業に忙しく、チョコを可愛がってはいたが、かまう時間はあまりなかった。
私の母は高齢のため犬の世話をやくことはできない。
当時の私は診療、家族への義務遂行に心血をそそがねばならぬ時期で、可愛いとは思っても私の守備範囲内にチョコを入れる余裕はなかった。
妻が必然的にチョコの面倒をみる事になったが、その妻も常に娘達の事を考えていたのであろう。
ともかく、当時の我が家は犬べったりのゆとりある雰囲気ではなかった。
そのため二代目チョコは、初代チョコ、今いるワンコ達のように太い絆で家族と結ばれることはなかった。
チョコは約10年間生きた。可愛いヤンチャな犬だったが、最後の頃は反抗的になっていた。死因となった乳癌のため苦しかったのかも知れない。
珍しく家族4人がそろっている時に、皆が見守る中で最後を迎えたのがせめてもの慰めであった。
60年前に飼っていた初代チョコについては、忘れられない楽しく哀しい思い出が多数、脳裏に焼き付いているのに、二代目のチョコの記憶については殆どないのに等しい。家族にその話をすると皆で私の事を非難し、チョコは本当に可愛そうだったと涙をうかべる。私も可愛そうな事をしたとつくづく思う。
チョコの事で私は大きな教訓を得た。動物を飼うのには、時間的、精神的に余裕がある事が絶対条件だ。身の丈にあった生活をしなければいけない。
今我が家にいるワンコ達のことについては、余話でいずれ書くつもりだ。二代目チョコに詫びつつ。

 
           2011年11月1日
 矢野耳鼻咽喉科院長  医学博士 矢野 潮