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 第29話
  「当院のインフルエンザ対策」

 今年は2月に入ってからインフルエザが猛威をふるっている。2月中はA型、3月に入るとB型が流行するという。
インフルエンザの予防・治療については毎日のように新聞、テレビで詳しく報道されているので、ここでは簡単に触れる。
予防のためには絶対に予防接種を受けることが重要だ。「予防接種を受けていればインフルエンザにかからない」、というのは大きな誤解だ。然し予防接種を受けていれば、例え、インフルエンザにかかっても軽症ですむというのは事実だ。この事を担当医は患者さんに詳しく説明する義務があると思う。故に、受験生、高齢者、赤ちゃんのいる家庭では家族全員が予防接種を受けることが必要だ。今年予防接種を受けなかった方は、来年からは是非実行して頂きたい。
マスクの着用、手洗い、うがい、可能な限り人混みを避ける事等は巷間いわれているとおりだ。
 

当院は、耳鼻咽喉科が専門なので、内科、小児科よりもインフルエンザの患者さんは少ない。それでも、“疑い”を含めると毎日5~6人くらいのインフルエンザの検査を施行する。
ただでさえ杉花粉症の患者さんで混雑するこの時期に、インフルエンザの患者さんを隔離診察するのは、院長として頭の痛いところだ。
ヒポクラテスの誓い(後記)のもとに、院長、副院長は医師としての使命感故に、感染症の患者さんに接することに何のためらいもない。然し、当院で仕事をしているスタッフ達には感染させたくない。スタッフ達を守るのも院長の重大な責務だ。どこかの匡の豪華船の船長のように院長、副院長は逃亡することを許されない。
そこで、発熱の患者さんには、あらかじめ電話連絡の上、裏玄関から入って頂き、二階にある二つの小部屋で院長、副院長のみが患者さんに接触するように心がけている。検査、処方箋、領収書、おつり等の受け渡しもスタッフ達を遠ざけて実行している。
今現在、心にかかってるインフルエンザの患者さんが二人いる。
一人は、5日後に国立大学の受験をひかえた男子、彼が無事に受験を受けられる事を心から祈る。
もう一人は、当日、長野県に転居する2才の幼女。引っ越しの予定が早朝であったために、診療時間前にインフルエンザテスト施行したところ、A型陽性で高熱あり。私は2~3日引っ越しの延期を進言したが、両親の都合で引っ越しを強行した。抗ウイルス剤の効果を信じるのみだ。
医師としての義務をまっとうしたといっても、一人間としての私の心は安らかでない。
後記  我々は医師免許証を授与される時、ヒポクラテスの誓いを復唱いたします。
ヒポクラテスの誓いとは下記の如しです。
 
 
           2012年3月1日
 矢野耳鼻咽喉科院長  医学博士 矢野 潮