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第32話「嬉しい話」
 私はホーム頁上で毎月初めに院長余話を加筆している。その理由はホームページを公開したきりでそのまま放置するのは、何となく無責任な気がするからだ。然し、私はもとより文筆家ではない。私の稚拙な文章がインターネット上で世界中に駆け回るのは考えてみると恥ずかしい事だ。家族、友人からも中止するように幾度となく勧告された。当然な事だと思う。
然し、最近になり院長余話を続ける勇気を後押しする二つの嬉しい出来事を体験した。

1週間程前、鹿児島の未知の女性から速達でお手紙を頂いた。素晴らしい達筆で教養の深さを感じさせる文章だった。
その方は、私が院長余話第21回(医師としての第一歩)で書いた私の慶応医学部の先輩である山岡三郎先生のご令嬢だった。たまたま私のホームページで、私が父の臨終を看取る時に貴重なアドバイスして下さった山岡先生への感謝の念を書いた50年前の逸話をお読みになり、父君への懐かしさのあまりペンをおとりになったという。偶然とはいえ、鹿児島の方からお手紙まで頂くとは何という光栄であろうか。つくづく不思議なご縁だと思う。
 

 噴煙を上げる桜島

次は今日(5月15日)に診察にみえた患者さんの話をご紹介する。 34才のヘビ-スモ-カ-の女性の患者さんが、私の院長余話第5回(私自身の禁煙体験記)をお読みになり、一念発起して自らの意志で禁煙に成功したとのことだ。私の余話がその方の寿命を10年は延ばしたことになる。医師冥利につきる話だ。
 
 

詳しいことは忘れたが、作家曾野綾子氏は、“自殺は悪”を主題にした著書の中で、何人の人がこのエッセイに目を通されるかはわからないが、自分の文章を読んで一人でも自殺を思いとどまってくれる人がいたら本望だとのべている。


そこで私は曾野綾子氏に対抗して(勿論ジョ-ク)、私の院長余話で一人でも多くの方が禁煙に成功なさることを祈る。
折りも良し、5月31日より6月6日は世界禁煙デー! いずれ、耳鼻咽喉科疾病と喫煙については詳しく書くつもりだ。
乞うご期待。
          2012年6月1日
 矢野耳鼻咽喉科院長  医学博士 矢野 潮