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第33話「ペットの癒し効果」
 今回は私自身が体験したペットの癒し効果について述べる。
本題に入る前に大作家の著書から引用するのは気がひけるが、オランダ紀行(司馬遼太郎著)に、オランダのキンデルダイク地方に昔から伝わる挿話として次のような話が出ている。オランダを襲った大洪水の後、ライン川に赤ちゃんと一匹の猫が乗っていた丸い板が流れてきた。赤ちゃんが寝返りを打って板が傾くと、猫がすばやく体重を移して平行を保ちながら流れ着いたという話だ。猫は赤ちゃんの救い主だ。
オランダ語で堤のことをダイクという。猫はカットで、流れついた猫にちなむカッテンダイク(猫堤)という地名もキンデルダイクの近くにある。
   以上はオランダ紀行(司馬遼太郎著)からの引用です。
日本では昨年の冬、車が谷に転落して凍死しそうになった祖父とその孫を同乗していた愛犬(ゴールデンレットリバー)が、体温で一晩中二人を暖めて、凍死から救ったという話が報道された。心暖まるニュースだ。
 話を本題のペットの癒し効果に戻す。
実際に私が体験した話だ。極めて多忙な一日を終えて帰宅、遅い夕食の後、血圧をはかった。日頃は正常な血圧が驚くほど上昇していた。過度の疲労で精神的にいらいらしている時には血圧は上昇していて当然だ。その様な時には血圧をはかるべきではない。常に血圧ばかり心配する高血圧不安症になるからだ、という医師の意見もある。逆に血圧が高そうな時にこそ血圧を測定して、脳出血等の高血圧に起因する発作を予防する必要があるという考えもある。医師の見解も二つに分かれる。
その時、私の食事が終わるのを待っていた愛犬プリンが膝の上に乗ってきた。プリンと戯れた至福の数分後、血圧を測り直すと信じられない事に、血圧が完全に正常値に戻っていた。私は思わずプリンの顔を見てプリンと目があった。「パパ、血圧が下がったでしょう!」、とプリンが語っていた。

 

見つめるプリン
動物(プリンは私にとっては家族)の癒し効果は薬石よりも効果があるようだ。それ以来私は血圧が高い時はプリンを頼りにしている。副作用皆無の最高の治療だ。プリンはきっと私を長生きさせてくれるだろう。
動物が嫌いな方は、イライラした心を癒すために、音楽を聴く或いは画をかくこと等に楽しみを持つことをおすすめする。

 
 
プリンとその家族のことについてはいずれ書くつもりだ。
          2012年7月1日
 矢野耳鼻咽喉科院長  医学博士 矢野 潮