掲 載 一 覧 最 新 号
第39話「プリンの御正月」
 私の愛犬プリンは、下顎の抜歯、歯周組織再生療法(EMP療法)という先進医療を日大動物病院(藤沢市亀井野)で受けた。昨年11月末のことだ。お陰様で元気になり最高のお正月を迎えられた。
最初にお世話になった日大動物病院(亀井野)についてふれるのが礼儀だろう。執刀して下さった准教授の先生、その周りの先生方、スタッフの人達、病院全体の雰囲気等ほのぼのとした温かみを感じた。
多分、犬を動物として扱わず人間と同じか、或いは人間以上の存在として接しているためではなかろうか。

 
さて、プリンの手術のことに戻る。全身麻酔下で行われる事になったので、手術日が決まってからの1週間、私は不安で夜も眠れなかった。
たかが犬の事ではないか、と考える人も多いと思うが、プリンは私にとってはかけがえのない宝物だ。プリンがいない生活など考えられない。
私と、ゆかり副院長の二人でプリンを連れて日大病院に行った。簡単な視診の後、C.T等の精密検査、ていねいな説明の後、手術が施行された。心配していた全身麻酔も無事に行われ、手術後の経過も良好だった。
完全に麻酔がさめた翌日、私が予期していない事がプリンに起こった。あのわがままなプリンが手術後、人(?)が変わったように素直になったのだ。
手術前にあった下顎の不快感によるイライラが無くなったためだろうか。暇さえあれば抱きしめていたのに、何故もっと早くプリンの苦痛に気づかなかったのだろう。私は自分のうかつさに不覚にも涙を流した。
“涙を流す”、院長余話の何処かで書いたような気がして、掲載一覧を読み直した。滲出性中耳(第12回)の所に、我が子の耳の悪い事に気づかなかったお母様のエピソードを書いてあった。
略記すると(詳しくは第12回をお読み頂きたい)、長期間治療されずに放置されていた滲出性中耳炎のお子さんが、私の治療直後から急にすなおになり聞きわけがよくなった。それ迄、耳の不快感が強かったのだろう。それなのに治療せずに放置してかわいそうなことをしてしまった。本当は良い子だったのに。涙、涙!
私もプリンの苦痛を見落とすという同じ過ちをおかしてしまったのだ。
追記
本年は嬉しいことで幕を開けた。
1月15日発売(1月20日号)の週刊朝日の犬ばか 猫ばか ペットばかという頁に投稿した私のコラムが採用された。週間朝日は名だたる全国規模の週刊誌だ。その欄への投稿は全国から無数に殺到するので、採用される確率は宝くじに当たるようなものだと言われている。私の雑文が選ばれた事は最高の光栄だ。
お読み頂ければ嬉しい。

            2013年1月1日
 矢野耳鼻咽喉科院長  医学博士 矢野 潮