掲 載 一 覧 最 新 号
第48話「診療と平和」

平和の鳩(当院のシンボル)
 10年1日という言葉があるが、私は開業以来50年1日の様に診療を続けている。と、いうより“好きな診療”を続けているうちに、あっという間に50年がたってしまったと表現した方が良いかもしれない。実に充実した日々の連続だ。
ところで、私は威張っている人が大嫌いだ。私自身、家族スタッフに威張って接したことはない。(余談だが、私のまわりで一番威張っているのは愛犬プリンだろう。プリンの威張り方については、来年一月号の院長余話に掲載予定だ。是非お読み頂きたい。)
私のクリニックには明るい楽しい雰囲気が常に漂っている。穏やかな心を常に私に保たせてくれる約20人のスタッフに感謝の念で一杯だ。
私のクリニックの朝は、スタッフがそろった直後、私が出勤して始まる。朝の簡単な挨拶の後、スタッフと無駄話を20分程する。喋るのはほとんど私だ。「昨日、プリン(愛犬)がどうしたこうした。今朝の“あまちゃん”は面白かった――等々」。私がしゃべり続けるのだが、スタッフは、友達のようにチャチャを入れながら聞いてくれる。スタッフ達の方が私よりも大人なのかもしれない。
数年前、「朝は朝礼から始めなければいけない」、と大先輩から忠告された事があった。スタッフにその旨を告げ、ある朝朝礼を行ったが、ぎこちなくて一日で止めてしまった。本当の朝令暮改だ。スタッフとギスギスした関係では長い一日の診療を行えるはずはない。白衣に着替え、最初の患者さんに向き合った時、私はスイッチを入れ替えプロの医師となる。
楽しいく明るい雰囲気で患者さんに接するのには、院内が平和であることが必要条件だ。今の良い雰囲気のままスタッフとの関係を維持したいと私は切望する。


スタッフよりの誕生日プレゼント
この私のポートレイトを誰か買わないかとスタッフに持ちかけたが、全員の答えは no だった。スタッフにとっては、“実物の院長を只で見ている方が楽しいのだろう”、と私はかってに想像している。
表題の“診療と平和”は、トルストイの名著“戦争と平和”をもじってつけた。


         2013年10月1日
矢野耳鼻咽喉科院長  医学博士 矢野 潮