掲 載 一 覧 最 新 号
第56話「私とパソコン」
 60才台で定年退職した私の友人(男性)は、料理学校、茶道、俳句を学びながら、パソコン教室にも通っている。彼なりに第二の人生を有意義に過ごしている。羨ましい限りだ。
70才台も終わりに近づきながら、尚、現役の医師として夜8時頃まで診療を続けている私には、パソコン教室に通う暇はないし、あの細かい字で書かれている仕様書を夜遅く解読する根気もない。夜、目を酷使する事は翌日の診療にさしつかえる。鼓膜の微細な変化をよみとらねばならない耳鼻科医は、正常以上の視力を確保ことが重要だ。
さて、正確には覚えていないが20年程前、慶応大学湘南キャンバス環境情報学部と、藤沢医師会をネットで結ぼうという研究会があった。私自身もその研究会に出席したのだが、情報環境学部側は医師会員のITについてのあまりの無知ぶりにあきれたようだ。
あくまでも一般論だが、“人間”を相手にしている医師は、IT分野は不得手だ。環境学部と医師会との間に温度差があるのは当然だ。環境学部はそれが専門、我々医師会員は患者さんを診察するのが専門、その道で遅れているからといって卑下することはないだろう。
然し、藤沢医師会も時代の変遷に気づいたのか、医師会員のパソコン購入を積極的に推奨するため、10万円を補助する英断?を下した。それでも私は全くパソコンに興味がなかった。然し、持つべきものは良き友だ。慶応医学部の同級生(脳外科医・故人)が、しぶる私を無視して、私の名前で医師会にパソコン購入を申し込んでしまった。そして、インストラクターとして、T氏を紹介してくれた。それが、私のパソコン修練の第一歩だった。
私は、以前からオアシスのワープローを使用していたので、ローマ字打ちだけは一応習得していた。それが少しは役にたったが、パソコンの複雑な機能など全く理解できなかった。まさに70の手習いだ。その頃は60才台だったかもしれない。そのインストラクターのT氏が、覚えの悪い生徒を手取り足取り丁寧に指導してくれた。出来の悪い生徒ほど教え甲斐があるというが、私のわからない事は電話でも相談にのってくれるし、月一回、自宅にレッスンに来てくれる。T氏は年齢からいうと私の息子世代の人だが、私とは実に良く気があう。良い師に恵まれた私は、医師会の中では恥を欠かない程度にパソコンを覚える事が出来た。
今、写真の編集、構成、文章内への挿入を練習していると不思議な現象が起こった。私が膝の上にいたプリン(愛犬)を撫でていると、プリンが自然にパソコンの中に飛び込んでしまった。これが、その瞬間の写真だ。
この不思議な現象は、T氏も解明できないとう。
プリンと私は超能力的な共依存症のようだ。

後記;私のホーム頁はT氏の構成だ。

          2014年6月1日
 矢野耳鼻咽喉科院長  医学博士 矢野 潮