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第77話「春夏秋冬」
 日本は四季の変化に富んでいる。春は桜、夏はひまわり、秋は銀杏、冬は梅の花等の美しさを楽しめる。
だが、私は哀しい事に花をめでる美的感覚に乏しい。そこで、自宅から見える桜の春夏秋冬の変化を自分への戒めとして写真にとり保存した。
然し医師として、季節の移り変わりを敏感に感じることは出来る。
4月、桜の花が咲き誇る前に、耳鼻科医はである私は、杉花粉の飛散で春が近づいた事を感じる。ゆううつな杉花粉症の始まりだ。花咲く春を花粉症の発症で知るとは複雑な気持ちだ。
 春の桜
夏は夏風邪(ヘルパンギーナ)、脱水症を含む夏バテ、クーラー病(正式な病名ではない)の患者さんが急増する。
夏の桜 
秋になると、秋の花粉症の他に、朝晩の温度差に起因する体調不良の患者さんが急増する。耳鼻咽喉科的には鼻炎・咽頭炎・喉頭炎(内科小児科ではカゼと総称する)で発熱する患者さんが増える。又、めまい症、突発性難聴、及びそれに類する急性難聴の患者さんも増加する。
何となく“体調の不良”を訴える患者さんが増えるのもこの時期だ。
 秋の桜
年の瀬がせまると、インフルエンザが多発する。そして、急性中耳炎のために、耳の異常を訴える乳幼児の患者さんが急増する。
冬の桜
四季の移り変わりを病気の変遷からのみよみとるのだから、医師としてのプロの目は自慢できるが、人間のセンスとしては何かもの悲しい。





         2016年3月1日
矢野耳鼻咽喉科院長 医学博士 矢野 潮