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第79話「家庭における幼児の危険」
 子どもを育てた親として、又、医師としての経験から私は幼児の周辺には危険が満ち満ちているとおもう。
最近、知人の孫(2才)が自宅のお風呂でおぼれて亡くなったという知らせがあった。いくら忙しくても2才の幼児から目を離すことは危険だ。
そこで、今回は私なりに感じている“幼児の危険な世界”をとりあげる事にした。
外出時、一番気にかかるのは、幼児と手をつながないで、道を歩いているお母さん達の多いことだ。親子は手をつなぎ、親は車道側を幼児は内側を歩くのが常識だろう。
さて、耳鼻科医として感じる幼児の危険を列挙する。
遊んでいる時、又、診察中に泣きながら口の中に飴玉を入れている幼児がいる。飴玉をのどにひっかけたら大変だ。
 
 飴玉
 幼児がチュウインガムを嚙むのも危険だ。のどにひっかけたら大変だ。ガムを嚙みながら試合をしていたラクビーの選手がが、タックルされた瞬間にガムを気管にひっかけて死亡したのは有名な逸話だ。
 
 チュウインガム
ピーナツを食べそこない、気管経由で肺に入ると、悪性の肺炎になり死亡することがある。
 
ピーナツ 
安全ピンは幼児にとって、安全ではない。のどにひっかけると除去する時にピンの針先がのどに刺さって非常に危険だ。
 
 安全ピン
幼児にとってボールペン 鉛筆 わり箸等尖った物は危険だ。歩きながら手に持って転ぶと体にささって死亡する事がある。
 
  ボールペン    鉛筆       割り箸
幼児が魚を食べる時は、ご両親は骨に気をつけて頂きたい。幼児ののどに刺さった小骨をとるのには苦労する。入院の上、全身麻酔が必用になる事さえある。すごく“高価なお
魚“になる。
 
 苦労してとった魚の骨
 ストーブの上にやかんを置いて、お湯を沸かす習慣の家があるが、幼児がそれにつまずくとヤケドの危険がある。
絶対にやめて頂きたい事の一つだ。

 
 
 私が耳鼻科医になって初めて慶応大学から出張した済生会宇都宮病院で、一人当直をしていた夜、硬貨を飲み込んだ急患が搬送されて来た。私は度胸を決めて一人で食道に引っかかっている硬貨を内視鏡でとった。何しろ医師になって二年目のこと、教科書上の知識しかなかったが、思ったよりスムースに除去できた。その時の嬉しさは強い記憶として残っているが、100円硬貨だったか10円硬貨だったか記憶がぼやけている。
 
 除去した硬貨の所有権は飲み込んだ患者さんのものか、除去した医師のものか日本弁護士協会に質問しようと思ったがやめた。
 
         2016年5月1日
矢野耳鼻咽喉科院長 医学博士 矢野 潮