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第83話「めまい」
 夏の猛暑が終わり、疲れが出る秋口になると、めまいの患者さんが急増する。
先日、BSテレビでVERTIGO(めまい・1958年初上映)の映画をみた。この映画は高所恐怖症のため、メマイに怯える主人公が主役のサスペンスドラマだ。めまい症の講義を受けていた医学部高学年の頃、東京日比谷の映画館で大勢の同級生と共にこの映画をみた記憶がある。
さて最近、季節に関係なく何となく、めまいを訴える患者さんが増えたような気がする。若い方も多いので、高齢化社会のためとは一概にいえない。やはり、社会の複雑化、それに伴うストレス、睡眠不足、過労の方が多いからだろう。
めまいの詳細については、私のホームページの病気の説明の項をお読み頂きたい。
めまい発作では面白い実話がある。20年位前の事だ。藤沢市医師会の大先輩(内科医・故人)から直接うかがった話だ。その方が伊豆のゴルフ場で急にめまい発作に襲われ地面に倒れた。瞬間、脳出血?脳梗塞?の発作を連想したという。しかし、それは単なる地震のゆれのためだった。そして数年後、今度はご自分のクリニックで診療中、激しいゆれに襲われた。地震だと思い、スタッフに逃げようと言ったら、「地震などありません。どうしたのですか?」、と言われたという。今度は本当のめまいだった。軽症なめまいだったので笑い話で終わった。
スポーツ選手のめまいで有名なのは、元サッカーの澤穂希氏の良性発作性めまいだろう。この病気についても、病気の説明の項をお読み頂きたいが、このめまい発作の根本的治療は頭部の運動療法だ。澤氏が頭部の運動療法を受けたかどうかは私は知らない。
又、私の知人(医師ではない)が、回転寿司で寿司の回転を見ているうちに、めまいがしてきたという。彼は、「寿司の回転がめまいの原因だ」、というので私は彼をたしなめた。「寿司の回転を見てめまいがしたのではなく、たまたまめまい発作をしている君が回転寿司に入ったのだ。」
私自身は、第五話(私の禁煙体験記)に述べた脱タバコ(禁煙)を実行し時に激しいめまいの襲われた経験がある。

 
Frenzelの眼鏡
さて、メマイの診察の第一段階は、Frenzelの眼鏡を使用し、患者さんの眼球動揺を拡大して観察することから始まる。
慶応大学病院耳鼻咽喉科に勤務していた頃、友人の医師が、めまいの患者さんを診察しながら、「トンボに静かに近づけてメマイをおこさせると簡単にトンボを捕まえる事ができる。拡大して眼球をみると、人間もトンボも同じようなものだ」と、患者さんの前で言ったため、教授にひどく怒られていた事を思い出した。




       2016年9月1日
矢野耳鼻咽喉科院長 医学博士 矢野 潮