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第93話「嗅覚障害」

 


 



 においは、鼻、口を通って入り、鼻の天井にある粘膜から脳に伝えられる。嗅覚障害(においの障害)は、鼻づまりを原因とする事が多い。
鼻づまりの原因は副鼻腔炎(ちくのしょう)、鼻ポリープ、アレルギー性鼻炎等があげられる。
治療には、鼻づまりの原因を取り除くための耳鼻科的治療が肝要だ。それで、快復しなければステロイドホルモンを点鼻することが切り札だ。下の図のように仰向けになり、約2ヶ月を目安に点鼻を1日に3回くらい続ける。




嗅覚が戻って来ても、点鼻を直ぐに止めず、様子を見ながら点鼻する回数を1日に二回→一回と段々に減らしていく事が重要だ。
ステロイドの点鼻薬に含まれているステロイドは微量なので、副作用を心配することはないし、自宅でできる便利な治療方法だ。
点鼻治療で十分効果が得られない場合は手術を考慮する。その場合には、嗅覚異常の程度を精密検査することが必用だろう。嗅覚検査は、聴力検査やめまいの検査のように簡単ではない。一般開業医には無理なので、私は大学病院に精査を依頼することにしている。勿論、大学病院の受診には紹介状が必用だ。
精査の結果、手術が必用な事もある。最近では、内視鏡による繊細な手術を行うことが出来るようになった。然し、手術後も、鼻処置や点鼻を続ける必用がある。
鼻を水で洗浄する事と、水泳はあまり良くない。
嗅覚の衰えは味覚の衰えとも密接な関係がある。食事を味わうこともできなくなり、
 

人生の楽しみも半減する。更に極論すると、無嗅覚症は火事の時に逃げ遅れの原因になる。嗅覚は愛する人への愛や懐かしさの記憶にも重大な役をはたす。発育中の新生児にはお母さんのにおいは生涯の思い出!





       2017年7月1日
矢野耳鼻咽喉科院長 医学博士 矢野 潮