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第94話「クーラー病」

 20年以上前、神奈川県内に頑固な内科医がいた。我々健康保険医は、保険法で定められた病名で保険請求をしなければならない。彼はクーラー病という病名を使用した。然しクーラー病という正式な医学用語はない。そのため役所から、上気道炎という病名で請求するように指示された。然し彼はクーラー病に固守した。その結果がどうなったか私は知らないが、彼の主張が正しいように思う。
私は寒さに弱いが、暑さには比較的強い体質だ。然し、今年の夏の暑さは特別だった。天気予報も毎日のように、熱中症の危険を報道し、特に夜間の熱中症の危険を強調している。その予防にクーラーの適当な温度設定の必要性を指示している。
然し、この適当という表現は無責任きわまりない。
私の寝室は個室だが、夜11時頃までは愛するプリン姫が私のベットを占領している。プリンが暑がりのため、室温を23度位に保たねばならない。そして、プリンを自室に戻してから、私は眠りにつくのだが、室温が下がりすぎているので冷房を消してから眠る。
明け方は暑くなるので、クーラーを付け直さなければならない。タイマーをセットすれば良いのだがなかなかうまくいかない。
先日は、クーラーをつけたままて寝てしまい、声がれと咳発作がひどくなり、完全に体調を崩してしまった。誰か、友達の医師の診察を受けようと思ったが、考えてみると自分がその専門家だった。




      逆の話

旧診療所では、冬になるとは大きなガスストーブを使用していた。ストーブをつけ、診療を始めると数時間で激しい頭痛に悩まされる。その話を家内にすると、「ストーブによる酸欠じゃないの」と簡単に言われた。ストーブを変えると頭痛がしなくなった。





       2017年8月1日
矢野耳鼻咽喉科院長 医学博士 矢野 潮