掲 載 一 覧 最 新 号
第95話「血液型」

 慶応医学部の講義で、生理学岡本助教授の第一声の厳しさは、今でも私の耳に残っている。
「このクラスの中で、血液型で性格が決まると思っている者は、医師になる資格はないから即刻退席せよ。」
科学的検証では、血液型と性格や気質との因果関係は今でも立証されていない。
又、血液型と病気は関連性がないと言われている。自然科学に属する医学会では、当然の事だが輸血の時以外、血液型は意味のないことだと考えている。ところが、書店には血液型占いを含め占いの本があふれている。
疑問に思い、出版業界の知人に質問したところ、世の中が不況になると、その種の本が売れるのだという。
血液型、占いの話は、たわいのない会話の興をあおる時とか、酒の席等で話題にするのなら無害だが、幼稚園、小学校のクラス分けに血液型を考慮する事もあると聞く。こうなると、くだらない事ではすまされない。関係者の反省をうながしたい。又、自分の血液型で将来の自分像をえがき、進路を決める若者もあるという。愚かな事は考えない方が良い。

血液型判定 
結婚相手を決めるのに血液型を参考にするにいたっては論外だ。
重ねて言う。血液型は輸血の時に意味があるだけだ。その時のためには、自分の血液型はしっかり覚えておく必要がある。
アレルギー体質の患者さんの治療のため、アレルギーの原因を確かめるために血液検査をする事がある。どうせ採血するなら、ついでに血液型も調べて欲しいという患者さんの希望が時々ある。もっともなことだが、血液型の検査は、手術を前提とした時以外は、健康保険を使えない。
(自費の検査料金は1000円~2000円)
血液型の検査に、健康保険を使えないという細かく、意地の悪い事を考えた人の血液型を占ってみたいものだ。多分O型ではないだろう。



       2017年9月1日
矢野耳鼻咽喉科院長 医学博士 矢野 潮