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第131話「私は騙されない」
 数日前、下水工事をすすめる男が玄関先に来た。必要ないと断る。偶然かたまたまか、その夜のテレビで、下水工事の詐欺が横行していると報じていた。
その数日後、若い男が玄関先から家の中を覗きこみ、畳の部屋のないことを確認して、商売にならないと言って帰っていった。畳をひきたかったらしい。
 
10年程前、保土ヶ谷に住んでいた姉が住まいを新築した。その屋根が、特別な原因なく、隣家の庭に落下した。怪我人がでなくてほっとした。後から調べると、屋根を止めていなかったとのことだった。
ひどい話だ。屋根のトラブルは未だある。自宅付近の屋根を工事していた屋根屋が我が家の屋根瓦が傷んでいるので、至急、瓦を大幅に取り替えた方が良い。自分の工事会社で安く請け負うという。その業者は断り、出入りの業者に修理を依頼した。出入りの業者曰く 「悪い所はありません。修理の必要はありません」。油断もすきもない。
 

更に数年前、我が家に宅急便で瀬戸の置物が届いた。かなり高額な請求書が入っていた。家中、そんな注文をした者はいない。ゆかり副院長が詐欺だと看破して、宅急便業者に連絡。すぐに引き取ってもらった。油断もすきもない。後で聞いた話だが、東京池袋では、かなり大きな置物詐欺が発生したとのことだ。長女の機転で難をまぬかれた。ますます、長女に頭があがらなくなった。
これもかなり古い話だが、車の接触事故の後始末に相手の家に行った。その時、「事故のことは全て任せて下さい」をモットーにする超一流保険会社の女性社員を同伴していた。相手の家に近づくと、保険会社の社員が急に、「私は女だから、お客さんが自分で交渉して下さい」、と言って急に逃げてしまった。相手が紳的な人だったから良かったが、保険会社の無責任さには呆れ果てた。勿論、その保険会社は解約した。
私の姉が、某銀行に勤務していた大昔の話だ。札束を数えてながら、手触りで偽札を発見し、表彰された事がある。姉ながらさすがプロだと尊敬した。
その姉が、退職後、暇になり、犬を飼いたくなった。自分の欲しい犬をケンネルで決め、子供にお金を渡してその犬を連れて来るように頼んだ。子供夫婦が連れてきたのは猫だった。私は姉に、ケンネルで見た犬は猫が化けていたのだろうととりつくろった。酷い話だ。



         2021年3月1日
矢野耳鼻咽喉科院長医学博士 矢野 潮