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第133話「怒り心頭」前編
 今の若い先生方はご存じないと思うが、私が医学部高学年の頃、「ベン・ケーシー」というテレビドラマ(モノカラー)が人気をはくしていた。私は今でも、そのビディオを時々みている。ケーシー医師は、極めて厳格な脳神経外科医で、私の同級生の数人が、ケーシー医師にあこがれて、脳神経外科医の道を選んでいる。
さて、そのドラマの一場面をご紹介する。
ケーシー医師が患者に、「貴方の主治医からの紹介状には、脳神経外科的の検査をして欲しいと書かれていたので、私は必用な脳神経外科的な検査を施行しましたが、検査に異常は認められませんでした。後は、精神科の医師に任せた方が良いでしょう。私は、義務として、その専門医をご紹介します。その旨、貴方の主治医にもご報告いたしました。」
長々とベン・ケイシーの話をここに書いたのは、責任あるケーシー医師と全く反対の無責任きわまりない医師に、怒り心頭に達しているからだ。
 
この原稿を書いている9月22日の3週間程前、私
の姪(眼科医)が、「自分の夫(医師でない)が、昨日から強度の上腹部痛と背痛で騒いでいる。何処の先生を受診したらよいと思う?」、と電話で相談してきた。私は、とっさに胃潰瘍の穿孔を連想して、内視鏡を得意とする、胃腸科クリニックに、「親戚の者ですが、胃痛が激しいので胃の内視鏡をお願いします。」と、その日の朝一番に電話で丁重にお願いした。



         2021年6月1日
矢野耳鼻咽喉科院長医学博士 矢野 潮