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 第十四話「病気の説明は
      わかりやすくていねいに」

 このことは、私が日常の診療で、もっとも重視していることだ。
その原点は、私が慶応大学耳鼻咽喉科医局から済生会宇都宮病院に赴任していた時にさかのぼる。医師になって2年目の若い時のことだ。入院中の患者さんに手術内容の説明を終えた時、思いもかけず婦長から、「今の難解な説明では、あの患者さんは何一つ理解できなかっただろう」、と指摘された。自信満々な医師への、経験豊かな婦長からの厳しいお灸だ。その時に受けたアドバイスが私の貴重な経験となり、今でも私の中で生き続けている。
1962年・済生会宇都宮病院にて
現在の私は、患者さんの訴えには出来るだけ耳をかたむけ、患者さんが理解しやすいように、わかりやすく病気の説明をするように心がけている。
さらに最近では、医療用ファイバースコープ、ビデオカメラの進歩で、必要に応じて画像が出せるようになったため、患者さんへの説明が更に、わかりやすくなった。
しかし、第3話で述べたように、病気の説明は要領よく簡潔にしないと、待合室の患者さんの待ち時間をいたずらに長引かせる原因となる。
そこで私は、口答で説明した後、一般の方にも理解しやすい内容の「手作り説明書」を、患者さんに直接お渡しするようにしている。患者さん御自身が後でゆっくり説明書に目をとおして頂くことにより、病気へのご理解を深めていただけると期待している。又、御家族にも病気の内容を知っていただく事に役立つと思う。
「前もって、説明書をお読みいただき、ある程度の予備知識をお持ちのうえで、矢野耳鼻咽喉科を受診していただいたほうが、より有意義ではないか」、とのゆかり副院長、さゆり医師の進言をとりいれて、この度ホームページに説明書を全部公開することとした。

            2010年12月1日
  矢野耳鼻咽喉科院長  医学博士 矢野 潮