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第二十六話「中耳炎の診断」

 いよいよ冬の到来です。冬はカゼが流行する季節、中耳炎の患者さんが多発するシーズンでもあります。
中耳炎はご存じのように乳幼児に多い病気です。私自身も幼児期に中耳炎をくり返した嫌な記憶があります。
いうまでもなく、中耳炎の診断・治療は先ず鼓膜の所見を正確に把握する事からはじまります。
耳鼻咽喉科専門医として、私は乳幼児の鼓膜を診ることにかけては誰にも負けない自信があります。「鼓膜を診る技術」とは、即ち中耳炎を診断する技術です。
私は患者さんを診る時に、旧式な額帯鏡を使用せず、高性能の拡大レンズをつけたファイバースコープ(クリニカライト)で鼓膜を詳細に観察いたします。額帯鏡のかぼそい光と違い、拡大レンズをつけたクリニカライトを使用すれば、鼓膜を鮮明に照らすことができます。さらに必要な時は、硬性鼓膜鏡、診察台に取り付けてあるマイクロスコープ(診察用の顕微鏡)を使用することもあります。それでも微細な鼓膜の変化は読みきれない時は、ティンパノメトリーという機械で鼓膜の変化をグラフにして確認いたします。
ティンパノメトリ-は数秒で終わる簡単な検査ですが、鼓膜の病的所見を診断する精度は高く、高性能のレーダー探知機の役を果たします。


院長余話では医学の専門的なことは書かないようにしているのですが、ここにきて耳鼻科専門医としてのプロ意識が芽生えたようです。実際に診察時に鼓膜鏡で撮影した鼓膜の写真とティンパノグラムを記載いたします。

   
   
   
   
 
   
 
   

専門的過ぎてお分かり難いところはご来院時に詳細にご説明します。

乳幼児の診察の好きなゆかり副院長、さゆり医師も鼓膜を診る技術は優れています。最近では私以上かもしれません。
乳幼児の中耳炎の患者さんは地元の開業医の診療を受ける事が多いため、私が慶応大学病院及びその関連大病院で診療に従事している時には、乳幼児の中耳炎の鼓膜を診察する機会には恵まれませんでした。
そのため、私は独立し開業する決心をした後、慶應義塾大学病院を退職して、慶応系の有名な開業医の病院で、数年間、乳幼児の鼓膜を診る修行をいたしました。その頃の経験が、今の私の診断技術の源になっているのだと思います。
又、私は子どもさんが好きです。赤ちゃんの泣き声も気になりません。いくら泣き叫ばれても、乳幼児の中耳炎が治ったことを確認し、ご両親にそれを告げる時は何にも優る嬉しさを感じます。中耳炎が治りにくい時のご両親の困惑は私の困惑でもあり、治った時のご両親の喜びは私の喜びでもあります。
自分の得意な専門分野で、社会に貢献しているという“自信と実感”を持てることは何にも優る私の喜びです。


           2011年12月1日
 矢野耳鼻咽喉科院長  医学博士 矢野 潮