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第53話「雪かき」
 不可抗力とはいえ、積雪のため臨時休診して、患者さんに御迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。
雪 桜 
さて、今回の雪害のお陰で私は思わぬ事に気がついた。「娘達が、いざと言うときは私より実行力がある」、という事だ。
「診療の実力では、私よりも娘達の方が優れて来たかな?」と、うすうす感じていたが、今回の大雪に立ち向かう娘の迫力には驚いた。
雪かきの道具を多数買いそろえ、クリニック、借り駐車場、自宅の周辺、今は使っていない旧診療所の前道路を暗くなる迄雪かきに没頭していた。
 
 
バス通りに立ち往生していた車の前の雪を取り除き、その家まで誘導したという。例え若かった頃の私でもそこまで出来なかっただろう。
更に、娘と一緒に雪かきに汗してくれたスタッフ達及びその家族には感謝感激だ。
悪路の中、出勤するだけでも危険なのにクリニックの周辺道路を喜喜(?)として整備してくれたスタッフには頭が下がる思いだ。
「ここには男性がいないから、私達が頑張らなくっちゃ!」、と言ったスタッフの言葉に私はユーモアと無限の優しさを感じた。
 
雪かきしているスタッフ 診療所の窓から撮影
いざ鎌倉!という時に、人はその器量を発揮するという。今回の大雪のお陰で、私は娘をみなおした。
古い話だが、私が横濱の山手に住んでいた学生時代、屋敷の一角から不審火が出た。父はその頃、体調不良で我が家の男性は私一人しかいなかった。私は一人で懸命に消火活動をした。消火器など無い時代だ。どうやって火を消したかは覚えてはいないが、ともかく消火に成功した。

 
 山手の家 初代チョコと共に
この屋敷は複雑な構造をしていて、離れには父方の従兄弟二人(私と同年代)が住んでいた。然し彼等は、私の消火活動を黙って見ていて全く手伝ってくれなかった。
父が、「いざという時に人間の器の差がでるものだ。潮は彼達よりはるかに優れている」、と私を褒めてくれた。幼少時代から、何でも適当にこなして来た私は、親から褒められた事も怒られた事もなかった。生涯に一度だけ父から受けた褒め言葉を今でもはっきり覚えている。
今回の余話は「父から娘への褒め言葉」、「院長からスタッフへの感謝」、の思いをこめて書いた。



 
          2014年3月1日
 矢野耳鼻咽喉科院長  医学博士 矢野 潮