今年の7月初め、プリンはお尻に出来た脂肪種の手術を受けた。3年ほど前に、歯の手術を受けた時と同じ日大獣医病院だ。
“入院は3日間、全身麻酔”、私はプリンの安否が心配でならなかった。それこそ眠れぬ3日間だ。
退院当日とその翌日はさすがにプリンも元気がなかったが、その後、予期せぬ変化がプリンにおこった。“おすましプリン”が、すっかり子犬のようになり、いたずらっ子になってしまったのだ。
クリニックの二階の院長室をスキップで駆け回り、わざと椅子の高い所にのぼって、飛び降りそうなポーズをとり、“危ないぞ”といって我々をおどかして、ニタニタしている。
今、考えると、よほど手術前は気分が悪かったのだろう。冒頭にかかげたプリンの写真を見直すと、つらさを訴えるプリンの表情がうかがえる。
私達医師は専門分野にとらわれず、患者さんの雰囲気から、全身状態をよみとらねばならない。私にはその自信があった。
例えば、冬季インフルエンザの流行期に発熱患者さんを診察する時、医師の義務としてインフルエンザテストを必ず行うが、患者さんの表情から、テストしなくてもインフルエンザかどうかを予想することができる。
又、インフルエンザとは関係なく、患者さんの皮膚に手をふれただけで、発熱しているかどうか検温器と同じくらい正確に当てることが出来る。
その私が、これほどベッタリと愛しているプリンの苦痛に気付かなかった。今となっては信じられない程のうかつさだ。
プリンは家族の中でトップの座を占めている。
ご免なさいプリン
教訓
医師は、自分の家族の病気を診てはならない。
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2015年9月1日
矢野耳鼻咽喉科院長 医学博士 矢野 潮
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