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第98話「幼児医療の恐ろしさ」
 藤沢で開業する前、都内の病院に勤務していた時の事だ。幼児(2才)が耳痛と高熱で受診。そして咳発作が激しい。軽症の中耳炎と簡単に診断はついたが、高熱の原因になるとは思われない。私が診察する直前にかかりつけ小児科医を受診している。然し、私は肺炎が主病であると確信して、直ちにその小児科医に転送した。可愛そうに、そのお子さんは翌日なくなった。3才未満の幼児の肺炎は危険な経過をとる事があるので、入院治療するのが医学の常識だ。肺炎については、専門外である私もそれくらいの知識はもっている。
幼児の肺炎では、もう一回、貴重な体験をしている。
私の姪が2才の時に肺炎となり、近くの小児科名医の紹介で総合病院の小児科に紹介され緊急入院の上で治療をうけた。
熱もさがったので、一週間で退院を許可された。退院時に主治医から、母親が入院時の胸部のレントゲン写真と、退院時のレントゲン写真を提示され、肺炎の痕跡がなくなった事を得意げに説明されたという。車で帰宅したのでそのまま紹介して下さった主治医のお宅にお礼のつもりで伺った。近くの小児科医はその子をみるなり、ひどい脱水症状で命が危ないと言われ、その場で即座に点滴による水分補給をして頂き危ない所で助かったという。その総合病院の小児科医は肺炎を治したが患児を死なせる所だった。
       2017年12月1日
矢野耳鼻咽喉科院長 医学博士 矢野 潮