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第126話「銀ブラ」

 銀ブラとは、銀座でブラジルコーヒーを飲む事で、ブラブラすることではないという。どちらでも良いが、若い頃は頻繁に銀ブラを楽しんだ。
 
当時の銀座四丁目地図

銀座四丁目は、地価が日本で一番高価な所だ。四丁目交差点の少し新橋寄りに、大黒屋というお店があった。私の慶応高校時代の担任の先生は大黒屋の御曹司だった。私は、日本一の資産家の先生に、担任をして頂いた事になる。約30年程前にクラス会でお会いした時は懐かしかった。
大黒屋さんより、新橋よりにあった手袋屋さんの事も忘れられない。大学生の時、店頭にあった手袋を買おうとしたら、「学生には、その手袋は贅沢すぎる。こちらの安いのにしなさい。」と、アドバイスされた。この手袋屋さんも、慶応の先輩だった。
六大学野球の早慶戦で勝つと、慶応の学生は銀座へ行き、ライオンで乾杯する習慣があった。早稲田の学生は、新宿の歌舞伎町に繰り出すのが常だった。
東京だけでなく、藤沢駅の近くにも銀座通りがある。

更に、小田急線の鵠沼海岸駅の近くの商店街も銀座通りという。
 昔の鵠沼海岸駅傍 
 現在の信号の無い交差点 
私がインターンの頃に目の前で目撃した光景、が忘れられない。信号機のない交差点で、自転車に乗っていた高齢者が、常用車に接触しそうになった。車の運転席から降りて来た大男が、手を振り上げて高齢者をどなりつけた。私は大男のあまりの剣幕に驚いて、只、見守っていたが、通行中の女性がその大男の手を掴み静止させた。今、考えると凄く勇気のある女性だ。更に驚いのはその車の後部座席に、力道山(世界最強のプロレスラー)が悠然と座っていた。




         2020年9月1日
矢野耳鼻咽喉科院長医学博士 矢野 潮