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第136話「防空壕」
 この写真は私の幼児期のものだ。アメリカに留学していた父は、太平洋戦争の初頭から、アメリカの方が日本より軍備において充実していると、断言じていた。
米軍機による爆撃を予期し開戦直後、庭に防空壕を作った。
真実かどうかは知らないが、B29の爆弾には耐えられると豪語していた。然し、米軍は爆弾でなく、焼夷弾を使用した。私の家は全て炎上してしまった。そして、爆撃に耐えるはずの防空壕も、家とともに炎上した。防空壕の中に、隠匿してあった食料も全て燃えた。その煙が数日間ただよっていた。通行人が、「食べ物を隠しているから、罰があたったのだ」、と皮肉を言った。その通りだろう。
工事中の防空壕 
家財産は失ったが、防空壕のお陰で家族は全員無事だった。
米軍機が、「ナチス・ドイツは壊滅せり、日本も::」と、降伏をうながすビラをまいた。又、女性の声で日本は負けたという米軍の女性アナウンサーの声も忘れられない。


         2021年9月1日
矢野耳鼻咽喉科院長医学博士 矢野 潮